漫画家セットで初めてのアナログ原稿

私が漫画家セットを購入したのは小~中学生の頃。
その時初めて「つけペン」を手にしました。

これから漫画を初めて描きたい人
身近に漫画を初めて描きたいお子さんがいる人
デジタルでは原稿を描いたことがあるけどアナログも試してみたい人

そんな方向けに、「漫画家セット」についてご紹介したいと思います。

漫画家セットってこんなの

名称は色々あると思うのですが、私が言う「漫画家セット」は、漫画を描くためのいくつかの道具をセットにして売り出しているものです。

例えばこんな感じ。

漫画家セットの良さ

漫画家セットの良さは、漫画を描き始めるにあたり必要なものがある程度揃えられることです。

個別に揃えようとすると、

  • 何を揃えたら良いのか
  • 種類やメーカーなど、どれを選べば良いのか
  • どれくらいの量必要なのか

など色々悩んでしまいますが、先ずはセットで買ってしまえば取りあえず「原稿を描く」ことを試すことが出来ます。

漫画家セットでは出来ないこと

人にもよりますが、セットに付いてくるペン先やトーンでは、ストーリー漫画1本描くには足りない場合が多いと思います。

ペン先は先端が割れており、この隙間で吸い上げたインクで線を描く仕組みなのですが、描いてるうちに先端が広がったり丸まったりして綺麗な線が引けなくなってゆきます。
トーンは切って貼り付けて使うシールのようなものなので、広い範囲に貼るとあっという間に1枚使い切ってしまいます。

何話分もペン先を変えずに描ききってしまう方もいますし、トーンをあまり必要としない方もいますので必ずしも足りないわけではありません。
ですが、ペン先は1枚書き上げる前でも駄目になるときはありますし、トーンは沢山切ったり削ったりしないと上手に扱えるようになりません。どちらも消耗品です。

描いていると他の道具も欲しくなってきますし、結構すぐに買い足す必要が出てくると思います。

初めての原稿はアナログとデジタルどっちが良いか

初期費用が安いのはアナログ

デジタル原稿を描くには、最低限以下のものが必要になりますが、どれも高価なので1から揃えるとなると結構な費用がかかってしまいます

デジタルの場合の初期費用
  • パソコン
    10万円前後
  • 液晶タブレット
    4万円前後
  • お絵かきソフト
    2万3千円ほど
    ※CLIP STUDIO PAINT EX ダウンロード版の場合です。
     先ずは無料体験もできます。

ざっくりですが、ある程度快適に動作する環境を整えると15万円以上はかかりそうです。
でもその後は買い換えの必要が出てくるまでほぼ電気代しかかからないので、細かな出費はありません。

対してアナログ原稿は、高価なものを買わなくても始められるので初期費用は少額です。

アナログの場合の初期費用
  • 漫画家セット
    7千円ほど
  • その他文具、消耗品
    3千円ほど

ざっくり1万円ほどで始められるイメージです。
ただ、消耗品が多いので細かな出費がかかり続けます。

作業の簡単さ、効率の良さはデジタル

アナログもデジタルも作品を生み出す大変さは変わりませんが、「ベタを塗る」「トーンを貼る」といった作業の「簡単さ」や「効率の良さ」は圧倒的にデジタルが上です。

絵を少し回転させたい、一部分をコピーしたいといった時も、デジタルなら一瞬で完了します。
バックアップをとっておいて、何日も前の状態に戻すことも出来ます。

アナログの場合、最初は道具の使い方も難しく、失敗したときの修正もデジタルほど簡単ではありません。
原稿用紙は素手で触るとその部分のインクの乗りが悪くなってしまうデリケートなものなので、扱いにも気を遣う必要があります。

ですが、アナログだからこそ出せる味も存在します

それぞれの事情や気持ちに合わせて

個人的には、デジタルで描ける環境が簡単に整う状況であれば、デジタルから始めて良いと思います。
先ず1本の漫画を完成させるまでのハードルは、上記の理由でデジタルの方が若干低め。
もし描きたい原稿が同人誌(自費で印刷会社に入稿して本にする予定)だとしたらなおのこと、アナログ原稿のまま入稿すると印刷代も高くなってしまいますので。

でも、漫画を描きたいと思ったほとんどの人は、漫画を描く道具にちょっぴり憧れを持ってるんじゃないかなと思います。
私はそうでした。

そんな憧れを持ってる人は先ず漫画家セットで気軽に初めての原稿にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

買うならこんなセットが良い

最低限入っててほしい道具

  • ペン軸:「つけペン」の軸、「ペン先」をはめ込んで使う
  • ペン先:「つけペン」の線を描く部分
     Gペン:強弱がつけやすいペン
     丸ペン:細い線が描けるペン
  • 黒インク:「つけペン」の先をちょんと付けて線を描く
    ※筆で塗ってベタ(黒く塗りつぶすこと)に使ってもOK
  • B4サイズの原稿用紙(投稿用)
    ※同人誌を書く予定の場合はA4(B5原寸本用)

こんな道具も入ってると嬉しい

  • 白インク:修正やツヤの表現など、白くしたい部分に使う
  • トーン:白黒の漫画の中で、グレーや柄などの表現に使う
    ※透明なフィルムにドットや柄が印刷されたもので、擦りつけることで圧着させる
  • トーンヘラ:トーンを圧着させる道具
    ※トーンを擦りつけられるものであれば何でも良いので、無くても大丈夫
  • 練り消し:トーンを削った際に出るカスなどをまとめる
  • ペン先
     さじペン:均一な線が引きやすいペン
  • 雲形定規:曲線を描く為の定規
  • 漫画の描き方の本

その他用意した方が良いもの

  • シャープペン(鉛筆):下書きやセリフを書く
  • 消しゴム:下書きを消す
  • カッター:トーンを切ったり削ったり
    ※細いのが扱いやすいと思う
  • 長い定規:枠線など長い線を引く
  • 細い筆:ホワイトを入れたりベタを塗ったり
  • 水さし:ペン先や筆先を洗う
    ※小さい方が邪魔にならなくて良いかも、プリンのカップとか

道具の使い方

先ず最初に使えるようになりたい道具

つけペン(ペン軸・ペン先)

ペン軸の溝に、ペン先の尖ってない方をギュッと入れて固定し、先端にインクを付けて描きます。
おろしたては油が付いている場合があるので、ティッシュや布で軽く拭うのが良いかもしれません。

昔はこの油を取るためにライターで炙るのが一般的だったのですが、実はこれペン先の品質を悪くしちゃうのでNGだそうです。

私はめちゃくちゃ炙ってました。
ペン先に紙の繊維が付くことが頻繁にあって、この繊維のせいで線が汚くなってしまうのでペン先を洗ったタイミングで炙ってたんですが、あまり良くないことだったんですね。

原稿用紙

原稿用紙には、薄い色で「内枠」「タチキリ線」「外枠」「トンボ」が印刷されています。

  • 内枠
    文字や見せたい絵はこの中におさめるように描く
  • タチキリ線
    製本されるときに切り取られる予定の箇所の線
  • 外枠
    はしっこぎりぎりまで絵がある場合に、書き足しや塗しておくしておく範囲を示した線
  • トンボ
    印刷するときの基準になる線
    とっても大事なので塗りつぶさないように気をつけて

製本したときに閉じる側になる方を「ノド」といって、そちら側の内枠の外にはなるべく絵を描かないようにしてください。

投稿用の場合、
1枚目の表紙が左ページなので、原稿の右側がノドです。
2枚目の漫画本編1ページ目は右ページなので、原稿の左側がノドです。

トーン(トーン・トーンヘラ・練り消し)

透明なフィルムの表面にドットや柄などが印刷されたもので、擦りつけると張り付くようになっています。

  1. 台紙ごと貼り付けたい部分に重ねて、少し大きめになるように、トーン(フィルム)だけをカッターで切り取る
  2. 切り取ったトーンを貼り付けたい箇所に乗せて、軽く擦りつけてずれないように圧着する
  3. 必要に合わせてトーンを削る
    カッターでフィルムの表面に印刷された部分を削り取ることを「トーンを削る」と言います。
    小さい箇所や複雑な形に貼りたいとき、グラデーションのような表現をしたいときなど色々な時に削ります。
  4. しっかり擦りつけて圧着する

手順3の「トーンを削る」ですが、私は最初やり方がわからなくてとっても困りました。
トーンは表面にドットや柄が印刷されているので、カッターの刃を使い表面だけを削り取ることで透明なフィルムにすることができます。
普段カッターでものを切るときは鋭い刃のある辺を「」に引いて使いますが、削るときはカッターをパキッと折ったときに新しく出来る辺の先端を「横(斜め)」に擦りつけて使うイメージです。

削ると削りカスが出ますので、練り消しがあると削りカスをとってまとめるのに便利です。

手順4でトーンを擦りつける時に、トーンヘラを使います。
トーンヘラが無くても少し丸くなっていて擦りつけられれば何を使っても大丈夫です。例えばカッターの後ろ側とか。
私は直接強く擦って汚したりするのが怖いのでコピー用紙のような薄めの紙を乗せた上からトーンヘラで擦っていました。

その後使えるようになりたい道具

ホワイト(白インク)

はみ出た部分や汚れたところの修正やツヤの表現など、白くしたい部分に塗って使います。
細い筆を使うと塗りやすいです。

つけペンで白い線を引きたい場合、少しだけ水でのばして、筆でペン先にホワイトを付けるとやりやすいかと思います。
ホワイトは黒インクと違ってドロドロしているので。
水を足しすぎると、薄まってちゃんと白くならないので、筆につけた水でほんの少し延びやすくなる程度に調節してください。

雲形定規

綺麗な曲線を描く為の定規です。

下書きの曲線に雲形定規をあてて、丁度良いカーブを探して線をひきます。

最後に

漫画を描くための道具は他にも沢山あります。
例えば枠線を描く為の烏口(からすぐち)や、色々な図形を描く為のテンプレート、絵や写真を描き写すためのトレース台などなど。

ですがはじめに全てを揃えても使いこなすのは難しいので、先ずは漫画家セットを使って描くことを試してみることをお勧めします。

また、漫画の原稿用紙は最終的に白黒で完成させられれば使う道具は何でも良いので、うまく扱えない道具があってもそれにこだわらなくて大丈夫です。
例えばベタを塗るのは墨でも水性ペンでも油性ペンでも問題ありません。
線だって、自分の描きたい線が引けるペンなら何でもOKです。

先ずは描いてみること、1本の漫画を完成させることを目標に頑張って下さい!